Windows Home Server (無印) から 2011への移行記

自宅のAspire easystore H340Windows Home Serverを2011に移行したのでまとめ。写真はない。長文。

移行のきっかけ

2013年1月8日でWindows Home Server (無印) のメインストリームサポートが終了する*1Windows Home Serverはサーバー製品であるものの家庭向けという位置づけのためか延長サポートが提供されないので、来年1月以降はセキュリティパッチすら提供されなくなってしまう。ウチのWHSさんはいくつかのポートを外部にさらしているので、ちょっとまずい。

というわけで、後継のWindows Home Server 2011のDSP版が6000円くらいで投げ売りされていたこともあり、Windows Home Server 2011へ移行することにした。

移行要件

Windows Home Server 2011はWindows Server 2008 R2ベース*2のプロダクトである。動作要件はWindows Server 2008 R2のそれとほぼ同じだ。具体的にはMSDN LibraryのSystem Requirementsに記載があった。ポイントは

  • 64bit版のみの提供
  • 最低160GBのHDDが必要

という点。1点目に引っかかる環境の人はまず居ないと思うけど、2点目が意外と盲点。セットアップ時に160GB以上の容量を検出できないと、セットアップを進めることすらできないので要注意。余ったHDDを流用しようと考えている場合は容量が160GB以上か確認しよう。

新規ハードウェアの購入

今回はWHS2011用に新規ハードウェアを購入し、そちらにWHS2011をクリーンインストールして既存データを旧WHS機からコピーして移行する方法をとることにした。理由は下記の通り。

  • 開発・検証のために環境を手軽に作れるように、家庭内にハイパーバイザ型の仮想環境基盤を構築したかった
  • ハイパーバイザ型の仮想環境を導入するには、CPUの仮想化支援機能が必須となるが、現行機のCPU(ATOM 230)にはその機能が無いため、M/BごとCPU交換が必要となってしまう
  • 現行機のAcer Aspire easystore H340は大変メンテナンス性の高くコンパクトでスマートな構造のため、ケース等流用したかったのだが、HDDマウンタ周りが専用設計になっているようで、M/Bを載せ替えると若干の改造が必要
  • WHSには家庭の重要データが格納されており、移行が失敗するなどしてデータにアクセスできなくなると大変困る。緊急時にすぐ利用可能になるように、旧WHSにはなるべく手をつけない状態で残しておきたい
  • 富士通のPRIMERGY MX130 S2が12,000円で大変お安かった
  • PRIMERGY MX130 S2のM/BがAM3+だったので、15,000円で買える8コアCPU、Opteron 3280がほしくなった

最終的に物欲に負けただけとも言う。まあ、ATOM 230じゃWHS2011はきっと厳しかったと思う。きっと。

ハードウェアの準備とvSphere Hypervisorのインストール

  • PRIMERGY MX130 S2到着。とりあえず通電して動作確認したいが、家にモニタが一台もなかったので、DVI-HDMIケーブルでリビングのテレビにつないでみると普通に映って感動。42インチの大画面でBIOS設定(RAIDが有効になっていたので、AHCIに変更、vSphere Hypervisorを入れることを見越して時刻をUTCにあわせる)
  • 電源を落とし、パーツ交換。ケースを開けるのにひどく手間取る。今日までに5,6回は開けているが、未だにコツがわからない。CPUをOpteron 3280に載せ替え、メモリを16GBに増設、1TB HDDを1機増設。そして夏場の爆音対策にチップセットのヒートシンクにアルミの洗濯ばさみをアドオン
  • 再度動作確認。問題ないことを確認してvSphere Hypervisor 5.0 Update 1*3をインストール。デバイスの認識も問題なく、特筆すべきことは無し。IPアドレスをしっかり設定。ここでリビングから撤収
  • MacのWindows 7環境にvSphere Clientをインストールしてアレコレ設定し、WHS用の仮想マシンを作成する。HDD容量を160GBにするのを忘れずに。共有フォルダ用のディスクはWHS2011からRDMで使いたいので、vSphere HypervisorにSSHしてRDM用マッピングファイルを作成する

WHS2011のインストールと設定

  • インストールは何事もなく普通に完了。
  • とりあえずWindows Update
  • [サーバー設定]で設定できそうなものを設定する。メディアサーバ、ホームグループは使わないので無効。リモートWebアクセスは使うのだが、移行が終わるまで設定は後回し。

設定の移行

WHSの設定を見ながら同じように設定。

  • ユーザーの作成。
  • 共有フォルダの作成。なお、共有フォルダの物理パスはデフォルトでDドライブに設定されているが、このディスクはシステム用に用意した160GBのディスクから勝手に切り出された領域であるため使いたくない。デフォルトで用意されている共有フォルダの物理パスをすべて後からRDMしたディスク(Eドライブ)に変更する。
  • 共有フォルダのアクセス権の設定。
  • ABEを有効にして不要な共有フォルダを見えなくする*4。Windows Server 2008からグループポリシーの設定だけでよくなった。

データの移行

NTFSで元ファイルのACLを維持したままファイルをコピーしようとするとたいてい残念な結果になることが経験的にわかっているので、ファイルのコピーは別のPCから旧WHSのフォルダと新WHSのフォルダにそれぞれの移行したいユーザで認証して接続し、エクスプローラを使って行うことにした。念のため、事前に全てのファイルが表示されるようにエクスプローラの設定を変更しておく。

あと旧WHSではVisualSVNを使ってSubversionサーバーを立てていたのでそのデータも移行する。新WHSでVisualSVNをセットアップし、リポジトリのフォルダを旧WHS上のリポジトリフォルダの内容で単純上書きコピーすればよい。

運用ツールの移行

WHSにはもうかれこれ10年以上は運営しているWebサービスのデータのバックアップタスクと、共有フォルダの全データを別ディスクにミラーリングするタスクが設定してあったので、コレも移行する。

で、前者のスクリプトはWindows標準のftp.exeを使ってレンタルサーバからバックアップデータを取得するようにしていたのだが、Windows Server 2008仕様になったせいかファイアーウォールでブロックされてしまい、そのままではftp.exeがうまく動かなかった。ファイアーウォールの設定でftp.exeを例外設定し事なきを得る。

後者のミラーリングはBunBackupを使用して実現している。WHSの標準機能にバックアップがあるのは知っているが、バックアップを構成するためにHDDを1台犠牲にしなければならず*5、できれば旧WHSでミラー先として使っていたディスクをそのまま使用したかったのでBunBackupを継続して使用することにした。共有フォルダの物理パスなどが変わっているため、バックアップの設定を見直す。

タスクを手動実行し動いていることを確認。後日、自然体で実行されたときも問題なく動いていることを確認した。

新旧WHSのホスト名、ワークグループ名の変更

WHS2011のワークグループ名はWORKGROUP固定で、システムのプロパティから変更できないのだが、PowerShellを使って変更する方法がMicrosoft TechNetで公開されている

全てのデータ移行が完了したら、旧WHSのホスト名を変更、新WHSのホスト名を旧WHSで使用していたホスト名に変更する。旧WHSではホスト名を変更するのは難しくないが、WHS2011ではワークグループ名と同様にシステムのプロパティから変更することができない。ワークグループ名のときに倣って下記のようなPowerShellスクリプトで変更した。

$sysinfo = Get-WmiObject Win32_ComputerSystem
$sysinfo.Rename("newhostname")

プリンタの移行

WHSに接続されていたプリンタを新WHSに接続。一度仮想マシンをシャットダウンして、USBデバイスの追加を行う。再び仮想マシンを起動するとプリンタが認識される。共有設定をして各ユーザから印刷できるか試験する。

このとき、移行が楽なように共有名を同名で作成したのだが、旧WHSの時代に作成していたプリンタの設定では印刷できなかった。一度設定を削除して、新WHSのプリンタ設定を改めて追加する必要がある。

ルータの設定変更

リモートWebアクセスとSubversionのために、80,443,4125,8443へのアクセスを新WHSサーバーに転送するようポートフォワードの設定を入れる。旧WHS向けの設定は個々で削除しておく。

WHSのコンソールに戻り、リモートWebアクセスの設定を行う。

おしまい

2週間ほど稼働しているが、特に問題ない。文字に起こすと案外多くのことをやっているんだなあという感想。旧環境を横に並べながら移行作業ができたので、特に作業漏れや困ったことは起きなかった。最悪旧環境に切り戻せば問題ないので安心感もあって良かった。旧環境を捨てちゃう場合はちゃんと手順書起こしたりタスクメモかいたりしないと悲惨なことになりそう。

この文書が検索エンジン経由で誰かの助けになれば幸い。

*1:マイクロソフト プロダクト サポート ライフサイクル検索で確認できる。

*2:正確にはSBS2008ベースだった気もする

*3:当時5.1が出ていたが、問題が多いバージョンという噂を聞いてビビりスキップ

*4:ひみつのフォルダは奥さんから見えないようにね

*5:バックアップ用ディスクに設定すると、ディスク内容が強制的にフォーマットされる